なぜ、こんなにたくさん送られてくるのか
初回面談の後、担当者は求人をまとめて提示します。数十件規模になるのは珍しくありません。求職者から見れば「これだけ紹介してもらえた」と感じますが、出す側の事情は少し違います。条件に合うものを広めに拾い、反応を見ながら本人の希望を掴んでいく。最初の山は、提案であると同時に「探り」でもあるのです。
だからこそ、来た求人を全部同じ熱量で検討すると疲弊します。40社も50社も受けている人を現場で見てきましたが、数が増えるほど1社への対策が薄くなり、結果として全部落ちる。このサイトが「応募は5社に絞れ」と言う理由は、根性論ではなく工程の問題です。
内訳の見方:5割、3割、2割
いける求人(5割)
経歴と希望条件が素直に合っていて、書類選考を通過する見込みが立つ求人。ここが応募の中心です。ただし「いける」の中にも、行きたい度合いには差があります。
チャレンジ求人(3割)
経験の面で一段背伸びが必要な求人。求める側の条件には届いていない部分があるものの、書類の見せ方と面接対策次第では勝負になる枠です。全部は受けない。狙いを定めて数社に絞ります。
無理だが魅力的な求人(2割)
今の経歴では現実的に厳しいのに、社名や条件の魅力で「行きたい」と思わせる求人。ゼロとは言いませんが、ここに時間を使いすぎると、いける求人への対策が削られます。魅力に引っ張られて全体設計が崩れるのが、この2割の怖さです。
※運営者が支援の現場で持っていた感覚値をもとにした概念図です。会社・担当者・時期によって構成は変わります。
※この比率は、支援の現場で担当者が持っていた感覚値です。分母の手がかりとして書いておくと、4年間、平日は1日3人の面談を続ける中で、紹介求人の山を何度も見て仕分けてきたときの傾向です。統計調査の数字ではありません。会社や担当者によって構成は変わります。大事なのは比率そのものより「全部が同じ種類ではない」と知って仕分けることです。
なお、最初に提示される求人の多くは、担当者が1件ずつ選んだものではなく、登録情報と求人要件のマッチングで機械的に寄せられたものです。「誰かが意図的に無理な求人を混ぜている」というより、「誰もまだ仕分けていない」状態が実態に近い。だからこそ、受け取った側でこの物差しを使って仕分ける作業に意味があります。5:3:2は、提示の意図を言い当てる数字ではなく、あなたの手元に来た求人を捌くための目安として使ってください。
仕分けの手順
- まず2割を外す。魅力的でも、今の経歴で書類が通る絵が見えない求人は候補から外します。迷ったら「書類が通ったとして、面接で何を語れるか」まで想像してください。
- 5割の中から本命を決める。年収・勤務地・働き方だけでなく、「その仕事の先に何が積み上がるか」で順位をつけます。
- 3割は数社だけ残す。チャレンジ枠は、書類を一番手厚く直せる会社に絞ります。
- 合計で本命5社程度に収める。残りの時間は、受ける会社の面接対策に全部使います。
仕分けに使う判断軸は4つ
求人票を眺めるだけでは仕分けは進みません。次の4軸で1件ずつ判定してください。
- 書類が通る絵が見えるか:自分の経歴のどの部分が、その求人の必須条件に当たるのかを言葉にできるか。できない求人は、魅力があっても2割側です。
- その仕事の先に何が積み上がるか:今の職種の延長か、設計・構築やクラウドなど、次に移りたい領域への橋になっているか。
- 条件の折り合い:年収・勤務地・働き方で、自分の妥協ラインの内側に入っているか。ライン自体は面接の前に決めておくものです。
- 面接で語れる材料があるか:通ったとして、その会社の業務に結びつく自分の判断経験を2つ以上話せるか。
仕分けでよくある3つの失敗
2割の魅力に全体設計が引っ張られる
有名企業や高年収の求人は、落ちても「受けた」という満足が残ります。ただし、その準備に使った時間は、いける求人の対策から引かれています。2割は「今回は見送る」と決めること自体が、仕分けの成果です。
5割を全部受けてしまう
いける求人だからといって全件応募すると、面接日程が詰まって1社ごとの作り込みが消えます。5割の中にも順位がある。本命5社程度に収めるのは、「いける」の中での絞り込みです。
仕分けを担当者に丸投げする
「おすすめ順に並べてください」と頼んだ瞬間、順番は担当者の都合(企業との関係や決まりやすさ)で決まります。仕分けの軸は自分が持ち、担当者には「なぜこの会社が自分に合うのか」の説明を求める側に回ってください。
仕分けの実演:40件が来たときの動き方
手順を、実際の流れで追います。まず40件を4軸で1件ずつ判定し、「いける/チャレンジ/見送り」の3つの山に分けます。この時点で、見送りの山に2割前後が落ちるはずです。次に「いける」の山に順位を付け、上位と「行きたい度合い」の高いものから本命候補を選びます。チャレンジの山からは、書類の翻訳や見せ方で勝負が付く会社だけを2〜3社残す。合計が5社程度に収まったら、残りの時間はすべて、その5社の面接対策と書類の作り込みに使います。
途中で担当者から追加の求人が届いても、扱いは同じです。4軸で判定して、既存の5社より優先度が高いものだけを入れ替える。新着だからという理由で本命の枠は空けません。仕分けは一度きりの作業ではなく、活動中ずっと回す工程です。
仕分けの結果は、担当者にこう返す
仕分けたら、結果を担当者に共有します。「この5社を本命として進めたい。理由はこうです」と軸ごと伝えると、次に来る求人の質が変わります。担当者は、軸が明確な求職者には外した提案をしにくくなるからです。逆に、仕分けずに流され続けると、提案は増えても精度は上がりません。仕分けは、担当者を教育する作業でもあります。
絞った先にある「練習の面接」
本命に入る前に、練習の面接を約2社置く。これも現場でやっていた設計です。ただし、誰でも受かる会社の面接を受けても練習にはなりません。使うのは、その人なら書類選考の通過が見込める企業。エージェントによっては、企業へ働きかけて面接の確約に近い枠を取れることもあり、そうした枠を練習用に確保していました。本命の面接は一発勝負にしない。それが絞り込みとセットの考え方です。
数を打つのは、対策を捨てることと同じです。5社に絞って、1社ずつ本気で作る。